
ここでは、骨粗鬆症予防のために気を付けたい食生活のポイントについてまとめます。
骨粗鬆症は、骨強度が低下(骨密度の低下&骨質の劣化)して骨折しやすくなってしまう病気です。これを予防・治療するには、骨密度を高めたり骨質を良くしてくれる栄養素を毎日の食事で補うことが必要になります。
手に入りやすい食品から摂取できる、骨に必要な栄養素は、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどがあります。
これらの栄養素を含む食品を意識して摂取しつつ、その他の栄養素も過不足なく摂れるよう、バランスの良い食生活に整えることが骨粗鬆症予防につながるのです。
骨を強くするために、積極的に摂りたい食品は以下の通りです。
骨の成分の約半分はカルシウムなどのミネラルで、残りはコラーゲン繊維です。骨粗鬆症予防にはカルシウムの補給が欠かせません。
骨粗鬆症の人は、1日に700mg~800mgの摂取量が推奨されています。
骨粗鬆症でない人でも1日650mgは必要とされていますが、日本人の1日あたりの平均カルシウム摂取量は499mgほどと言われているので、骨粗鬆症かそうでないかに関わらず慢性的にカルシウム不足になっている人が多いようです。
なお、体への吸収率は、乳製品>小魚>野菜の順番で高いとされています。
ビタミンDというのは体内のカルシウム濃度を調整し、ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収率を高めてくれる働きがあります。また、骨の形成を促す働きもあるので、骨粗鬆症を予防したい方にはおすすめの栄養素です。
ビタミンDが不足してしまうと骨の成形が上手くいかなくなるので、子供は成長不良やくる病になりますし、大人は関節が変形し骨がもろくなり骨粗鬆症の危険も高まります。そのため普段から食事できちんと取り入れて不足しないように気を付けたい栄養素です。
ビタミンDを多く含む食品はきくらげやしめじ、松茸などのキノコ類や、あんこうのキモやしらす干し、スジコ、イクラなどの魚介類です。シイタケは食べる前に一度日にあてて干しシイタケにすると、ビタミンDの量がアップします。
サプリメントなどで過剰摂取すると高カルシウム血症となり腎機能に障害が起きることもありますが、普段の食事で過剰摂取になることはほとんどないので安心して下さいね。
ビタミンKというのは主にケガなどをしたときに出血を止めてくれる働きをサポートする栄養素として知られています。しかしそれだけではなく、カルシウムが骨へ上手く沈着するのをサポートしてくれるという役割もあり、骨の形成には欠かせない栄養素でもあります。
そしてビタミンDと一緒に摂取することで骨密度を上げて、骨を丈夫にしてくれる効果もあります。ビタミンKが多い食品として代表的なのは納豆や緑黄色野菜です。
特に納豆には、女性ホルモンに似た作用をもつエストロゲンやカルシウムも含まれているので、閉経後の女性の骨の健康維持のためには積極的に摂りたい食品です。特にひきわり納豆の含有量が多いようですね。
納豆に次いでパセリ、しそ、モロヘイヤなどもビタミンKが多い食品として知られています。
コラーゲンというと肌や髪をキレイにする美容効果の高い栄養素というイメージがありますよね。しかし、コラーゲンは骨の強度を支える働きがあり、丈夫な骨作りには必要不可欠な栄養素です。また、コラーゲンを摂取することで骨の細胞の活性化にも繋がり、骨の代謝を促進することができます。
ではどんなものを食べればコラーゲンを多く摂取できるのでしょうか。コラーゲンを多く含む食品はフカヒレ、うなぎ、鶏の手羽、牛すじなどが一般的には有名です。ちょっと高額なものが多い気がしますよね。
「フカヒレやうなぎなんて高いもの手に入らないよー」という方も多いでしょう。ですが、コラーゲンは鶏の皮や軟骨、豚バラ肉、魚の皮、カレイ、クラゲ、エビ、ナマコにも含まれているのでスーパーやコンビニでお手軽に摂取することもできます。
イソフラボンってよく聞きますよね。イソフラボンというのは大豆イソフラボンのことで、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることで知られています。女性らしい美しさや肌の張り、若々しさを保ち、ホルモンバランスを整えてくれるという美容効果のイメージがありますよね。
しかし、大豆イソフラボンはエストロゲンというカルシウムの流出を防ぐホルモンの働きをサポートしてくれるので骨粗鬆症予防にも最適です。大豆イソフラボンを多く含む食品はもちろん大豆製品です。大豆と言えば納豆、豆乳、豆腐などが有名ですね。あまり大豆のイメージがないかもしれませんが、油揚げやきな粉、みそ、醤油なども大豆から作られている大豆製品なので大豆イソフラボンが含まれています。
骨粗しょう症を予防したいという方は、大豆イソフラボンと一緒にカルシウムを多く含む牛乳や小魚、青菜などを一緒に食べると効果的です。
また、カフェインやアルコール、糖分や食塩、リンを含む一部の加工食品の摂りすぎには注意が必要。
アルコールの過剰摂取は、カルシウムの吸収を阻害して尿として排出される量を増やしてしまいます。同様に、カフェインもカルシウムを体外に排出させる作用があることを覚えておきましょう。
そして、インスタント食品やスナック菓子といった加工食品にはリンが含まれています。体は血液中のカルシウムとリンのバランスを保つ働きをしますのでリンを摂りすぎると、骨のカルシウムが血中に放出されて、骨密度を減らすことにつながってしまうので、こちらも注意が必要です。
これらの食品を好む方は多いですが、骨粗鬆症の心配がある方はなるべく控えた方が良いでしょう。
このうち、特に注意したいのはリンを含む食品です。
ここで、リンがどのような働きをする栄養素であるのか説明しておきます。
【リン(P)】
カルシウムと結合し、リン酸カルシウムになることで歯や骨をつくります。
ほかに、血液中のPH(酸とアルカリ)バランスを保つ、疲労回復、細胞を成長させるといった働きがあります。
摂取目安量(成人):男性 1,000mg/日 女性 800mg/日
※厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)参照
リンは、カルシウムとともに歯や骨をつくる栄養素であり、体にとって必要なもの。
カルシウムが不足すれば、骨がもろくなる骨軟化症(こつなんかしょう)や、筋肉の萎縮といった症状を引き起こします。
また、カルシウムとリンは一緒に摂取することで、お互いの吸収をよくすることができるのです。
このときに大切なのはバランスで、カルシウムとリンを1:1の割合で摂取すると、カルシウムの吸収率がよくなり、骨折予防につながります。
例えば牛乳は、100g中にカルシウム110mg、リン93mgと理想に近い比率になっています。
しかし、問題なのはリンが過剰摂取になりやすい栄養素だということ。
現代の食生活では、カルシウム不足が問題になっている一方で、リンは摂りすぎが問題になっているのです。
リンは食品に含まれる栄養素としてだけでなく、以下に使われる食品添加物としても、わたしたちの体内に摂り込まれています。
何かと便利なハムやソーセージ、缶詰に加えて、調味料にも食品添加物としてリンが多く含まれています。
あらゆる食品に含まれ摂取しやすい栄養素であるのに加え、食品添加物からも摂取することになります。
そのため、耐用上限量(健康障害を起こさない最大量)を超えないように注意しなければなりません。
リンの耐用上限量(成人):男性 3,000mg/日 女性 3,000mg/日
※厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)参照
【リンの過剰摂取で起こる症状】
このうち、骨粗鬆症と深く関わってくるのが、血液中のカルシウム量の低下です。
人の体は血液中のカルシウムの量が減ると、減った分を補うために骨からカルシウムを放出します。
また、リンはカルシウムと結合しやすいという性質があります。
リンを過剰に摂取すると、腸内でカルシウムと結合するのですが、このとき水に溶けにくい性質に変化。
腸内で吸収することができなくなってしまい、吸収されるはずだったカルシウムが排出されてしまうのです。
リンの過剰摂取が続くほど、カルシウムは吸収されにくくなるうえ、骨からも放出され続け、骨がスカスカの状態になってしまうというわけです。
リンとカルシウムは理想のバランス(1:1)で摂取すれば、カルシウムの吸収がよくなり、骨を強くするので骨折予防に効果的です。
しかし、リンがカルシウムよりも多くなってしまうと、逆効果。
骨折予防のためには、カルシウムを積極的に摂取するだけでなく、リンを摂りすぎないようにすることも必要なのです。
リンは食品に豊富に含まれている栄養素ですから、意識して摂取しなくても不足することはほぼありません。
スナック菓子やインスタント食品など、体にとって必須ではない加工食品を減らして、リンを摂りすぎないように意識しましょう。